individual
土曜日の夜 人ごみに流されて
自分を見失いそうになった
ガラス張りの通路から見下ろすと
個人は埋没して識別できない
何百分の一の確率なのに
私を見つけられるの?
この世界にとって 誰一人も
存在する価値などありはしない
悲しい程に
確かなものなど何もないから
息苦しく喘ぐ夜に
交差点に立てば 分かる


日曜日の朝 空っぽの道端で
自分が消えてしまいそうになった
誰もいない 犬さえ通らない
何十億人のうち一人も
私を見てはいない
この世界の中で 誰一人に
見つけられなくても何も変わらない
切ない程に
涙も伝わらなければ無意味
空しく叫ぶ朝に
部屋を飛び出せば 分かる


この世界の中で 誰か一人
いなくなったとしても代わりはいる
痛ましい程に
交換は迅速に対応
眠れずに嘆く夜に
街を彷徨えば分かる